バーランダーは復活したのか?


MLBには常に最高と言われる投手が君臨している。今ならクレイトン・カーショウに間違いないが、数年前ならジャスティン・バーランダーだったはずだ。2011年には24勝をあげて投手には難しいとされるリーグMVPまで獲得した剛腕投手。7年1億8000万ドルという巨額契約も結び、タイガースとしてはこれから数年間エースとして活躍してくれることを期待していたはずだ。ところがほどなく成績は急降下していき2014年には防御率4点代にまで悪化、翌2015年にはこれまでなかった長期離脱も経験した。
完全に不良債権化したと思われたバーランダーだが、今季はここまでそれなりの好投を続けている。この2年ほどを考えれば復活と言っていいだろう。全盛期、そして不調だった時期と比べて何がかわったのか、彼の投球を数字で分析していく。

まずは、全盛期、不調期、現在の3つの時期の成績を比較してみよう。

全盛期(2011年)
防御率2.40 奪三振率8.96 四球率2.04 K/BB 4.39 WHIP0.92 FIP2.99

不調期(2014年)
防御率4.54 奪三振率6.95 四球率2.84 K/BB 2.45 WHIP1.40 FIP3.74

現在(2016年)
防御率3.54 奪三振率9.47 四球率2.44 K/BB 3.88 WHIP1.06 FIP3.49

3つの時期を並べてみると、一つわかりやすいのは奪三振率の違いだ。不調期は全盛期より奪三振率が3ポイントも落ちており、調子を取り戻した今季は奪三振率が全盛期並みの水準に戻っている。防御率、FIPもK/BBの数値の良し悪しに連動していることがわかる。つまりバーランダーにとっての生命線は奪三振率だったというわけだ。実際奪三振率が2014年と同様に悪かった2008年は、四球の多さも重なって防御率4.84とかなり悲惨だ。

 

それでは2014年には落ち込んでいた奪三振率が今季復活している理由を投球内容から探ってみよう。以下は全盛期、不調期、現在のそれぞれの投球内容だ。

全盛期(2011年)
4シーム 46.9%(95.0mph)
カーブ 18.6%(79.4mph)
チェンジアップ 18.4%(86.8mph)
スライダー 8.4%(85.6mph)
2シーム 7.7%(95.1mph)

不調期(2014年)
4シーム 37.5%(93.1mph)
カーブ 16.3%(79.2mph)
チェンジアップ 28.6%(86.9mph)
スライダー 14.5%(85.5mph)
2シーム 3.2%(93.2mph)

現在(2016年)
4シーム 51.5%(93.3mph)
カーブ 15.3%(78.0mph)
チェンジアップ 15.1%(86.9mph)
スライダー 18.2%(87.2mph)

上記の比較をみると、全盛期と比べて不調期と現在は球速が2mph近く落ちていることがわかる。最高球速も、全盛期は101mphを超えていたのが2014年には98mphまで落ちた。球速低下が不調の最大の原因と見ていいだろう。球速の低下は緩急をつける上でも大きな影響を及ぼす。2014年には各球種のパフォーマンスを評価する指標でスライダー意外の全球種がマイナス値を出している。どこか身体に不調を抱えながらの投球だったためだろうか。速球のパフォーマンスが低かったため速球の割合も例年に比べて低下しており、かなりチェンジアップに頼っていたのだがそのチェンジアップの効果も低いという悪循環だった。
不調期と現在を比べてみると、球速にはあまり差は見られない。流石に加齢とともに豪速球を投げ込み続ける力は失われたということだろう。それでもまだ並みの先発投手以上の球速を維持しているのは流石だ。全盛期は力で押してカーブで三振を取るパターンが多かったのだが、それが叶わなくなった今季は決め球を分散させることで補っているようだ。速球以外のそれぞれの球種を等しい割合で決め球として使うことで打者は的をしぼることができないでいる。不調期はパワーが落ちたことでベストなスタイルに全盛期とのズレが生じていたが、昨季から今季にかけてそのスタイルを確立することができているように思う。
おそらくもう9回に100mphの速球を投げ込み圧倒するバーランダーの姿は見られまい。全盛期は力で押す投手だったが、それだけでは終わらないということを今季の彼はみせてくれている。未だ十分な球威を保ってはいるが、うまく技巧派へと転身しようとしている。サイ・ヤング賞級の活躍は難しいだろうが、これからのバーランダーはただの不良債権では終わらないはずだ。大きな故障がなければこれからも優秀なイニングイーターとして働き続けてくれるだろう。特にこの1ヶ月は調子が良かったため、今季後半戦は獅子奮迅の活躍をしてくれることに期待したい。

 


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