前田健太 契約内容詳細


ドジャースへと正式に入団が決まった前田の詳細な契約情報が明らかにされたので、少しばかり見ていきたい。

8年総額2500万ドル。これが前田にこれから先保障された数字だ。これが高いか安いかと言えば、間違いなく安い。しかしもちろんこれで全てではなく、当初の報道通り毎年大型の出来高がついているようだ。

その内容は、開幕ロースターに入れば15万ドル。先発登板数には総額650万ドルの出来高がついている。先発登板15, 20回でさらに100万ドルずつ、25, 30, 32回でさらに150万ドルずつだ。またイニング数にも出来高がついており、90イニングで25万ドル、そこから10イニングごとに25万ドルが追加されていき、200イニングに到達すると75万ドルということになる。

もし前田が全ての状況を満たした場合は、8年で総額1億620万ドルという契約になる。1年あたりでみると約1300万ドルだ。ポスティングフィーを含めたとしてドジャースは前田に8年総額1億2620万ドルの価値が有り得ると考えたことになる。ただし、前田が満額を手にするためのハードルは実際かなり高い。日本のように勝利数や防御率に出来高が設定されているわけではないので、運がからむ確率が低く、単純にその仕事量で達成できる数字ではある。しかし32先発登板200イニングを達成する投手というのは基本的に2番手以上のレベルで、例えば昨年ならば200イニング到達は全体で28投手、32先発達成は36投手しかいなかった。もちろんその両方を達成した投手となると25人しかおらず、30球団あるということを考えると単純に各球団に平均1人未満ということになる。これが意味することは、この契約の満額を達成するならエース級投手でないと達成できないということだ。それが8年となればなおさらで、前田が満額を手にする確率は非常に低いと言わざるを得ない。しかも、唯一救いになるかと思われたオプトアウト条項が、今回の前田の契約には盛り込まれていない。8年間、契約内容は変わることなく全盛期を終えるということだ。

ではどうしてこれまどまでに選手にとって不利な契約になったのだろうか?競争原理が働いていればこんなことにはならなかっただろうが、前田にとって大きな痛手だったのはやはり今回のFA市場に有力投手が多かったということだ。すでに実績のある30歳前後の好投手が市場にいたため、前田の優先順位は必然的に低くなってしまった。また、それ以上に大きかったのは、フィジカルチェックで異常が出てしまったということだ。日本で毎年多くのイニングを投げてきたという実績は高く評価されているものの、元々体格の劣る投手は故障が危惧されやすい。記憶に新しいところではサイ・ヤング賞2回のリーグを代表する先発投手だったティム・リンスカムが若くして故障し大きく劣化している。それほどの投手でも”体格に劣る先発投手は長く保たない”という定説を覆せなかったのだ。前田は当然故障を危惧されるような体格だが、それに加えてフィジカルチェックの結果が全チームに送付されたことで獲得を検討していたチームも及び腰になったに違いない。その中にあってドジャースは少々足元を見て、おそらく1,2年は故障で失う前提で契約したはずだ。故障しても手術をすればまた元のレベルに復帰できるという算段なのだろう。

今回の前田の契約が衝撃を与えたのは日本に対してだけではない。ダルビッシュや田中の巨額契約や、黒田や岩隈ら日本人先発投手の活躍ぶりで少し麻痺しかけていた日本人ファンは、MLB選手会にとってもこの契約は非常に迷惑なものになってしまった。世界一の労組とも言われるMLB選手会は、とにかく選手に不利な契約が結ばれるのを嫌う。つまり前田の契約はMLB選手会が最も嫌うタイプのものなのだ。彼らとしては、これからこういった出来高が大きなウェイトを占めるような契約が流行らないよう祈るばかりだろう。

デビュー前から順風満帆とは言えない船出のマエケンだが、実際MLB関係者からはコントロールなどを高く評価する声は多い。あらゆる環境が一変する海外リーグへの移籍において、コントロールだけはその影響を受けづらいからだ。制球力のいい2番手級投手が理想像で、目標とするタイプは今オフにタイガースと契約したジョーダン・ジマーマンだろう。彼ほどの球威は前田にはないが、投球スタイルは似通っている。もしジマーマンのような活躍ができれば、前田の契約は非常にお得なものとして数年後もてはやされることになるだろう。それほど活躍できなくても批判の的にはなりそうにない、という点は唯一この契約でよかったことかもしれない。

[adsense]


あわせて読みたい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です